07 April 2023

Art

G-Star初のAIデザインによるデニムクチュール作品

デニムの未来を創る

近年、目を向けずにはいられないほど世間を賑わしているAI(人工知能)技術。新たなデニムデザインの模索から始まった私たちの試みは、ブランド史上初となるAIデザインを生み出すに至りました。しかし、私たちの挑戦心はそれだけでは足らず、革新的なソフトウェアを利用して生まれたAIデザインをアムステルダムのアトリエに持ち込みました。そして、AIデザインによるデニムケープの実物が誕生したのです。

AI(人工知能)とは?

AIは近年、世界中に旋風を巻き起こしている最新のテクノロジートレンドです。G-StarのAIプロジェクトはまず、生身の人間である私たちからのインプットをもとに、それをイメージ化するプログラム「MidJourney(ミッドジャーニー)」の力を借りるところから始まりました。技法はシンプルで、できる限り明確かつ簡潔にソフトウェアへのプロンプト(情報のインプット)を行うこと。上手くいけば、そこから極めて的確かつ革新的なレスポンス(イメージ)を得ることができます。私たちの史上初のAIデザイン作品は、こうして得られたアイデアをもとに形となりました。  

私たちはデニムに対して特有の世界観を持っています。ありきたりなデニムではない、創造性とイノベーションの追求ーそれがG-Starのあり方です。デザインとクラフトマンシップの限界を押し広げていく中で、私たちの最新の試みであるこのAIプロジェクトは、その可能性をさらにひとつ上のレベルへと押し上げました。この業界で、未だかつて無かった新たな可能性と革新への挑戦を続けてきた私たちが、デニムの未来を築くうえでの更なる一歩として踏み出したのがこのプロジェクトでした。

デジタルデザインがいかに実物のクチュール作品へと形を成していったのか、どうぞこちらのビデオでご覧下さい。

AIが生んだデニムケープ

プロンプト: デニム、モデル着用、有機的な形状、ミニマル、対比、先進的で斬新な鎧、テックウェアファッション、白背景、4K

G-Starのデザイナーチームが、上記の情報でMidJourneyチームにブリーフィングを行い、私たちのAIデザイン第1号が誕生しました。

仕立て職人チームが語るAIデニムケープの制作の裏側

スケッチやパターンがないところからの制作はいかがでしたか?たったひとつのイメージのみからのスタートでした。
「じっくりと細かなところまで観察する必要があります。まず始めに、しっくりくる感覚を得るためにいくつかモックアップを作成しました。バック部分は存在しなかったので、私が自らデザインする必要がありました。それもやっていくうちに徐々に形を成していきました。」

総合的な制作プロセスはいかがでしたか?
「何事にも不可能はありません。ただ、非論理的なディテールが多々あったので、難易度はかなり高かったです。多層のレイヤーがどうつながっているのか、そして各ディテールがどこで始まってどこまで続いているのかを見極めるのに相当の時間を要しました。しかし、それもまた楽しかったですよ。人間では決して思いつかないようなデザインですから。」

一番難しかったのは?
「すべてのレイヤーをどうつなげるか、それが最大の難点でした。まずベースのレイヤーとして、ジャケットを作る必要があるという結論に至りました。バックはルースな作りにし、ストラップでまとめて肩に結べるようにしました。そして、全体をまとめ、ウエストにシェイプを作るためのベルト。最後に、型破りの斬新なディテールの数々が施されたシールドをトップに重ねました。」

デザイナーチームの視点から見るAIデザインプロセス

AIプロジェクトはそもそもどういう経緯で始動したのですか?
「このプロジェクトのアイデアは、G-Star社内で結成された“デジタルファッショングループ”に端を発します。このグループには、イノベーションやテクノロジー分野への関心を同じくするメンバーが、所属部署に関係なく集まっています。私たちは新しいテクニックを試し、ファッションデザインにおけるAIの可能性を模索したいと考えました。ただ、デジタルの次元だけに制限されたくありませんでした。現実の世界で形ある何かを作りたい、そう考えて実行に移しました。今回のプロセスは、ファッションデザインにおけるAIの可能性を証明し、進化し続けるファッション業界の歩みを明らかなものにしたと思います。」

AIを使ったデザイン過程はどんなものでしたか?
「私たちはデザインプロセスに新たなツールを取り込み、革新していくのが大好きです。AIを使用することは、効率性と正確性の向上という利点をもたらし、また、生のアイデアを即座に完成度の高いイメージに視覚化できることで、制作過程におけるゴミ削減にもつながります。しかし、言及しておくべき重要な点は、AIはツールに他ならないということ。最終的にクリエイティブな決定を下すのは、生身の人間であるデザイナーです。」

AIを使用したファッション業界の将来はあり得ると思いますか?
「ファッション業界に大変革をもたらす可能性はあります。AIを使用することで、アパレル企業はオペレーションを合理化し、コストを削減して、よりサステイナブルなプラクティスを生み出していくことができます。カスタマーサービスにおけるAIによるチャットボットや仮想試着技術はすでに存在します。デザイナーの視点から言うならば、AIデザインがもたらす影響は、Adobeイラストレーターがハンドスケッチを行うプロセスにもたらす影響と似ています。プロセスの向上と高速化を可能にするものですが、どこまでいってもそれはひとつのツールに過ぎません。」

What's next?

私たちは今、確実にAIの時代に生きています。それは間違いありません。そのような環境の中で、G-Starの今後は?と聞かれれば、それは更なるイノベーションであり、実験の積み重ねであり、更なる可能性の模索です。デジタルの世界がより一層拡大し、メタバースファッションウィークのようなイベントが開催されるようになった今、その勢いは今後強まっていくばかりです。しかし、私たちがデニムを見る視点はこれまでとまったく変わりません。「デニムの可能性に限界はない」ーこれまでも、そしてこれからもそれが私たちの信念です。

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